性同一性障害とはどんな病気か
性同一性障害とは、医学的な病名です。すなわち、「生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず、心理的にはそれとは別の性別であるとの持続的な確信をもち、かつ、自己を身体的および社会的に別の性別に適合させようとする」障害です。
原因は何か
この障害は、生物学的性別とジェンダー・アイデンティティの不一致によって引き起こされます。生物学的性別は、単純化を恐れずにいえば、受精の際に精子にY染色体があるかどうかによって決まります。一方、ジェンダー・アイデンティティは2歳半ごろまでには決定づけられて、その後の変更は極めて難しいとされています。
いまだ不明のことが多いのですが、胎児のころの脳の形成過程が深く関与していると考えられています。
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症状の現れ方
自分の身体的な性に対する持続的な不快感、あるいは嫌悪感、またその役割についての不適切感があります。それと同時に自分とは反対の性に対して、身体的にも同じようになりたい、社会的にも反対の性で受け入れられたいなどの強い気持ちをもちます。
たとえば、体が女性で心理的に男性であれば、スカートをはくのがいやでズボンばかりはくとか、思春期になって胸がふくらんでくると、さらしを巻いて隠すというようなことが起こります。また、反対であれば(体が男性、心は女性)、ペニスや睾丸(こうがん)がいやでたまらない、ヒゲが生えているのが自分らしくないなどと感じ、できるだけスーツを着たりネクタイをするのを避けるようになったりします。
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検査と診断
生物学的性別とジェンダー・アイデンティティが一致しないことにより診断されます。
(1)生物学的性別の判定
生物学的性別は性染色体検査、ホルモン検査、内・外性器の検査などにより判定されます。
(2)ジェンダー・アイデンティティの判定
幼少時からの日常生活の状況を詳しく聞きとり、本人だけでなく、家族や親しい友人などからも情報を得たうえで、本人のジェンダーを判定します。
医学的には、半陰陽(はんいんよう)あるいは間性(かんせい)などの生物学的性別に異常があるものは除かれます。また、職業上の理由や、趣味、嗜好の理由で別の性別を望むものは含まれません。
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治療の方法
日本での治療は、日本精神神経学会のガイドライン(第3版)に沿って行われます。治療は領域を異にする専門家の医療チームによって行われます。
その内容は、精神科領域の治療(精神的サポート)と身体的治療(ホルモン療法と性別適合手術)の2つに大別されます。精神科領域の治療が先行し、身体的治療への移行が適当かどうかが判定されます。身体的治療の内容や順序については、当事者とチームが十分検討して決定することになります。
なお、これらの治療は、あくまで苦痛を和らげ、自分らしく生きるための手助けにすぎず、根本治療ではないことに注意が必要です。
性同一性障害かもしれないと思ったら
日本国内では、性別適合手術まで一貫した治療が受けられる施設は現時点(2009年6月)では3つの大学病院しかありません。しかし、まず診断を受けることが必要です。そのためには、各地域の性同一性障害に詳しい精神科医を訪ねてみてください。
このような典型的な性同一性障害の人たちの周辺に、さまざまな種類と程度で、自らの性別に違和感を抱いている人々がおり、広く「性別違和(せいべついわ)症候群」と呼ばれています。また近年、男女の社会的役割は大きく変わってきており、旧来の男性、女性という単純な二分法は、もはや通用しない社会になってきています。
(執筆者:中島 豊爾)
※初診に適した科を掲載しています。なお病院・診療所によって診療科目の区分は異なりますので、受診の際はよくご確認ください。
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