NHKスペシャルのうつについての番組についての感想、前回の続きです。
番組上での構成の上では前回ご紹介した部分の直接の続きではなく、更に少し後の部分で言及される内容なのだが、重要な問題でもあるので、早めに取り上げたい問題がある。
それは、双極性障害(躁うつ病)と、単極性うつ病では、薬の処方が全く異なるということである。
番組の中でも、何名かの患者さんに関して取り上げていたとおり、この点での誤診→薬の処方の見当違いは、日本の精神医療の現場では、現在も非常にありふれたことなのである。
これはなぜか? それは、たいていの患者さんは、うつ状態の時に受診なさるからである(当然のことである)。
双極性障害の中でも、典型例、つまり周期的に強い躁状態になる人については、周囲の一般の人も、それをうつ状態からの回復と誤解することは意外と少ない。
番組ではこの点までははっきり描きだれていなかったので補足すると、周囲の一般の人も、その「不自然な元気のよさ」に漠然と違和感を感じることが多い。
具体的に指標をいうと、
1.周囲の人は「元気になった、よかったよかった」と最初の頃は感じていたとしても、さほど立たないうちに、その人のノリにあわせていると、「妙に疲れる」と感じるようになる。
2.(これは番組の中でも映像で紹介されていましたが)その人と対話しようとすると、会話の途中で割り込む由がないくらいに、強引なまでにせっかちに一方的に話し続けようとする(ただし、そうした傾向は、以前の普段のその人にはあまり見られなかった場合)
である。
一般の人でも、こうした「躁状態」が、例えば基本的にはうつ状態の人が、周囲に心配をかけまいとして「元気そうに振舞う」場合とは区別できる、独特の「不自然さ」があることに気づけるようになることはさほど難しくはない。
ご本人も、そうした「不自然なまでのルンルン状態(イライラ状態の場合もある)」について、あとから振り返ってならば気がつけ、自覚できる場合も、実は結構見られる。
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ところが、双極性障害には、実は二通りあるのである。
●目に見えて顕著で、周囲の人を巻き込み、社会活動の面でも様々なトラブルが生じかねない域の、顕著な躁状態と、重いうつ状態を反復するという形で大きな躁鬱のうねりを周期的に繰り返すタイプ....「双極性I型」
●いい時でも、せいぜい軽い躁状態、場合によっては躁でも欝でもなく、まさに欝病からいい形で回復したかに、ご本人も家族や友人にも特に違和感なく感じられてしまう状態と、うつ状態を、周期的に繰り返すタイプ......「双極性II型
実は、今回の番組で取り上げられていたのは、この中の後者のタイプ(II型)の患者さんである。
そして、現在では、実はこの双極性「II型」と診断するのが適切なケースの方が、実は「I型」よりもかなり多い可能性があるように思われる。
【以下、第2版で増補-1】
番組では述べられていなかったが、私が開業カウンセリングの現場でクライエントさんから通院・服薬歴をうかがった経験からすると、実は、この「双曲II型」の人の中に、調子が上向いた時に、軽欝ですらなく、ほんとうに「通常の状態」ぐらいまで回復したかに見えるというサイクルをお持ちの方も多い。特に、うつ状態のときに通院を開始し、しばらく立つと調子が良くなった気がしたので、服薬も通院(入院)も自分の判断でやめてしまい、しばらくたつとまた欝状態になったので、今度は他の病院を訪れるということを、1年ないし数ヶ月の間に2回以上繰り返された皆様は、実は「隠れ双極性II型」なのに、病院をどんどん変えていくので医師にも気づかれにくくなっている場合が少なくないと思わ� ��る。
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